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飽くことがないのはなぜか。

 わたしたち、近代人であるわたしたちが物質的な富を追いながら決してそれに飽くことがないのは、そうした富をつうじて追い求められているものが物質的な欲求を満たすことではないからである。物質的な欲求であれば、有限量の資源によって満たされることもあろう。しかし物質的な富の追求に際限がないことが明かしているのは、その対象が無限であるということであって、だとすれば、そうした対象となり得るのはただ非物質的なものだけである。それは、いつだってもっともっと望まれているような何かである。経済理論というのは希少な資源の合理的な管理のことではない。この理論は自分をそうやって定義しようとして、「オイコス」に関する「ノモス」、すなわち「家政を宰領するうえでの決まり」という語源的な意味を折につけては持ち出すけれども、そうではないのだ。いま話題にしている著者はこう説明している。経済を動かしているのは欲望、とりわけ他者から認知され、妬みまじりでよいから賞賛を獲得したいという欲望である、と。この点に関するかぎり、ひとは決して飽くことがない。

 

ジャン=ピエール・デュピュイ『経済の未来ーー世界をその幻惑から解くために』(森元庸介訳)、以文社、2013。